肌の古い角質をはがし、新しい角質を取り戻そうとうする『ピーリング』。
クリニックで行なわれる『ケミカルピーリング』や、自宅でケアできる石けんやジェルによる『マイルドピーリング』に興味を持つ人もいるかもしれません。
しかし、ピーリング(peeling)とは「(表皮を)はがす」行為。気軽にやって大丈夫な行為なのでしょうか?
ニキビ治療におけるピーリングとは、角質を溶かす行為!
ピーリング治療が、“ニキビやニキビ跡に有効だ”と言われる理屈を説明します。
- 肌の古い角質層の一番外の部分を溶かす
- 肌のターンオーバーを強引に早める
- 新しい肌の生まれ変わりを促す
つまり、傷つき汚れた外側の肌をはがし、きれいな内側の肌に早く登場してもらおうという狙いがあるのですが・・・これは、はっきりと間違った考え方です。
年齢とともに周期のおそくなるターンオーバー
お肌の生まれ変わりのことを、ターンオーバーと呼びます。人間の表皮は、4つの階層から成り立っています。基底層で生まれた新しい細胞は、表皮の上のほうへ押し上げられてゆき、最後には老廃物(ろうはいぶつ)となって、はがれ落ちるサイクルのことです。
基底層 ⇨ 有棘層(ゆうきょくそう) ⇨ 顆粒層(かりゅうそう) ⇨ 角質層
「ピーリング」という行為は、このターンオーバーが何らかの原因でうまくいってない時には有効です。しかし、そもそもターンオーバーは加齢とともに周期が遅くなってゆきます。

- 20代・・・およそ28日周期
- 30代・・・およそ40日周期
- 40代・・・およそ55日周期
年齢に合わせた周期があるのに、無理やりターンオーバーを早めてしまったら、どうなるでしょう?
乾燥、細菌感染。『ピーリング』はバリア機能を弱める行為!
ターンオーバーを無理矢理、早める・・・言い換えれば、じゅうぶんに育っていない肌細胞を外界にさらすことになります。
実は、角質には雑菌からお肌を守り、お肌の水分の流出を防ぐ役割があります。保湿という、大事なはたらきがあるのです。自然とはがれ落ちる前の角質には、どんな化粧水もかなわないほど優れた保湿作用があります。
最強の保湿成分である角質をわざわざ剥がし、無防備な肌細胞がむき出しにしたらどうなるか? お肌は乾燥し、細菌に弱くなってしまいます。
ピーリングジェルや石けんの成分の種類と強さ
肌を保護してくれる角質を取りのぞくことの危険性について、述べました。
ここで、『ピーリングジェル』や『ピーリング石けん』に含まれる、角質を溶かす成分について述べたいと思います。
AHA系ピーリング(グリコール酸など)
AHAとは、アルファヒドロキシ酸のことです。グリコール酸(サトウキビ)、リンゴ酸、クエン酸(レモン)などがあります。果物由来であることから、フルーツ酸とも呼ばれます。
AHAのうち、スキンケアで良く使われるのがグリコール酸です。水に溶けやすく、皮膚への浸透性が高いのが特徴で、クリニックのケミカルピーリングで使用されることも多い成分です。
しかし強い刺激性があり、ピリピリ感を感じたり、人によっては顔が真っ赤になります。おそろしく乾燥しやすいので、化粧水にこの成分が入っていると、「意味ないのでは?」と思ってしまいます。
サリチル酸系ピーリング
サリチル酸は、ヤナギ由来の成分。炎症を抑える効果があります。
脂溶性(水に溶けにくく、油に溶けやすい)で、毛穴の汚れを落としてくれます。
クリニックでは、従来のエタノールに溶かして行なう「サリチル酸エタノール」に代わって、「サリチル酸マクロゴール」というケミカルピーリング行なわれるようになりました。
以前に比べれば肌への負担は減ったものの、バリア機能を低下させ、乾燥を招くことは変わりません。市販の商品にも、サリチル酸のピーリング石けんはたくさんあります。しかし、使用頻度と保湿の調整が難しく、自宅ケアで使うには慎重さが求められます。
TGAピーリング(トリクロロ酢酸)
トリクロロ酢酸は、肌の深部にまで働きかける成分で、クリニックではクレーター型のニキビ跡治療に使われます。
副作用は強く、かさぶたとなり、赤みや色素沈着につながる恐れもあります。市販の化粧品で使われることはまれです。
ピーリング成分の強さ
トリクロロ酢酸 > グリコール酸 > サリチル酸、乳酸 > リンゴ酸 > クエン酸
副作用の強すぎるトリクロロ酢酸は、市販のピーリング石けんやジェルにはまず含まれません。多いのは、グリコール酸です。
セルフケアの盲点! 角質除去化粧品以外にも、ピーリング成分は含まれている!
お肌の水分を守ってくれる角質を取り除いてしまう、ピーリング行為。ピーリングのリスクを知っていば、安易に角質をはがすことは控えるはずです。
ところが、肌の角質を溶かしてしまうピーリング成分は、「角質除去」をうたっていない洗顔フォームや化粧水に含まれていることもあるのです。これが、案外と盲点!
知らず知らずのうちに、ピーリング化粧品を使っていませんか?
特に、プロアクティブやファーストクラッシュなど、海外から入ってきたニキビ化粧品には、グリコール酸やサリチル酸が含まれていることがあります。
日本人は、欧米の人より真皮が厚く、表皮が薄いのが特徴です。海外の商品の中には、日本人向けのアレンジが充分なされていない事が多いのです。皮膚が薄く、刺激を受けやすい肌の人は、こういった商品の使用には注意が必要です。
ご自分の使っている洗顔フォーム、化粧水の成分を確認してみて下さい。グリコール酸やサリチル酸が含まれていませんか? 「角質を除去する」つもりはないのに、ピーリング成分の含まれた化粧品を長年つかっていたら・・・
お肌を保湿してくれる角質をみずからはぎ取り、バリア機能を弱めていたことになります。
乾燥肌の人、お肌の弱い人には、ピーリングは逆効果!
わたし自身、肌によかれと思ってさまざまなニキビケアを試してきました。しかし、体の免疫機能や肌のターンオーバーのことを勉強するにつれ、間違ったケアばかりしていたことを知ったのです。
・日焼けすれば、ニキビは目立たなくなると思っていた ⇨ 日焼けは、絶対NG!
・不潔だからニキビができると思い、一日に何度も洗顔 ⇨ 皮脂は取り過ぎてもダメ!
・ピーリングジェルを週に3回も使っていた ⇨ 角質を取り過ぎると乾燥をまねき、新たなニキビができるだけ
洗顔フォームや化粧水など、ニキビ化粧品に依存してきた人は、いちじるしくバリア機能が弱まっています。肌トラブルに悩む多くの人は角質がたまっているのではなく、むしろ角質をはがし過ぎているのではないでしょうか?