2017年の12月。女優の中村アンさんのインスタグラムが、大きな反響を呼びました。長年ニキビに悩まされていた中村さんが甘い物を我慢して炭水化物を控えたところ、過去最高に肌の調子が安定したというものでした。
ダイエットでなく肌荒れを改善するために、糖質制限に取り組む人も多いでしょう。しかし、ご飯を抜くなど、まったく糖質を摂らないのは逆効果。むしろ、便秘や肌荒れの原因となります。
ニキビ改善? 糖質制限がすすめられるワケ
まず、糖質制限がニキビに良いとされる理論は、次の通りです。
糖質の高い食品を食べると、血糖値が急上昇! インスリンや男性ホルモンが増加して、皮脂の分泌をうながす。皮脂が過剰に分泌されると、毛穴が詰まってニキビの原因となる。糖質を制限することで、皮脂腺を縮小させ、ニキビの炎症を抑えることができる。
わたしもこの理屈を信じて、ニキビ肌を治すために糖質制限を試みたことがあります。しかし、身体に変調をきたし、きっぱりやめました。

失敗した理由は、2つの知識がなかったからです。
- 糖質は、脳や体を動かすために必要なエネルギーである
- 抜くべき糖質、摂取したほうがよい糖質がある
順番に説明してゆきます。
糖質制限でニキビが増える?肌荒れの意外なメカニズムとは?
糖質制限のやり過ぎは、とんでもない悪循環を引き起こしてしまいます。というのも、人間の脳や身体を働かせるために、糖質は必要なエネルギー源だからです。車でたとえるなら、糖質は燃費のよいガソリンです。不純物を生まない、安全な燃料なのです。
糖質が足りなくなった場合、人間のカラダは、たんぱく質を代替エネルギーとして使います。具体的には、筋肉(=たんぱく質)を分解して脳や身体を動かすためのエネルギーを作り出すのです。
でも、たんぱく質には元々の役割があります。筋肉や心臓などの臓器、皮膚・髪の毛などを構成する成分となるのです。それなのに、脳や体を動かすためにたんぱく質を使ってしまったら・・・
栄養素というのは、生命維持に関わる場所へ優先的に送られます。この場合、たんぱく質は心臓や筋肉の再生のために使われ、皮膚や髪の毛に送られるのは後回しになります。皮膚や髪の毛は、心臓や筋肉に比べたら重要度が低いからです。
糖質制限 ⇨ 脳や体を動かすエネルギー(ブドウ糖)が足りない! ⇨ 体内のたんぱく質で代用 ⇨ たんぱく質が足りない! ⇨ 皮膚や髪の毛まで栄養が行き渡らない ⇨ 肌荒れや抜け毛になる
厚生労働省が2015年に出した「日本の食事摂取基準」によれば、1日の糖質摂取量の目安は、300g前後といわれています。お茶碗1杯のご飯の糖質がおよそ55gですので、3食ご飯を食べても問題ない量だとわかります。
抜くべき糖質は、ご飯より白砂糖!

糖質にも種類があります。かんたんに言えば、結びついている糖の数によって、体内で消化するスピードが変わってくるのです。すぐに消化される糖質ほど、ニキビができやすくなります。
糖1個からできている単糖(=果物・はちみつなど)は、吸収が早く血糖値を上げやすくなります。糖2個からできている二糖類(=白砂糖など)は、分解されるとすぐに血糖値を上げる性質があります。
血糖値を急激に上げる ⇨ インスリンが増加 ⇨ 皮脂腺を刺激 ⇨ 皮脂が分泌され、ニキビの原因になる
単糖類や二糖類に比べて、血糖値が上がりにくいのが多糖類です。これらは、たくさんの糖が繋がっているので、分解するのに時間がかかります。このため、単糖類に比べれば血糖値の上りは緩やかになります。でんぷん(=ご飯やいも類)、オリゴ糖(=ゴボウや玉ネギ)が多糖類にあたります。
果物や白砂糖を使ったお菓子を抜いて、ご飯や玉ネギはしっかり食べたほうが肌荒れ対策になるのです。
なお、小麦粉はでんぷん(=多糖類)ですが、一部の成分が胃や腸を荒らしてしまう恐れがあります。パンやパスタなど、小麦粉製品は摂取量を減らしたほうがニキビ改善につながります。

まとめ
糖質を制限しすぎると、脳や体を動かすエネルギーを確保できなくなります。代替エネルギーとして糖質の代わりにたんぱく質が使われると、お肌や髪の毛にまで栄養素が行き渡らなくなり、肌が荒れます。
糖質には、吸収の早いものと消化に時間がかかるものがあります。果物や白砂糖は控えて、ご飯はきっちり食べましょう。その上でたんぱく質(=肌細胞のもと)と緑黄色野菜(=美肌効果・抵抗力をつける)をバランスよく食べると、肌荒れは改善されてゆきます。